紀州俗伝(現代語訳4-15)

紀州俗伝(現代語訳)

  • 3-1 師走狐
  • 3-2 狐の仕返し
  • 3-3 ホタル来い
  • 3-4 雀と燕
  • 3-5 今生まれた子限り
  • 3-6 カイコの舎利
  • 3-7 月の8日
  • 3-8 欲深いシャレ
  • 3-9 2つの鐘
  • 3-10 比丘尼剥
  • 4-1 師走狐の鳴き声
  • 4-2 雨乞いの池
  • 4-3 フクロウと天気
  • 4-4 ホタル来い
  • 4-5 鰹鳥
  • 4-6 宵の蜘蛛、朝の蜘蛛
  • 4-7 他人の足の裏
  • 4-8 狐と硫黄
  • 4-9 早口言葉
  • 4-10 狼を山の神と
  • 4-11 女に化けるアナグマ
  • 4-12 葉巻煙草
  • 4-13 一文蛤
  • 4-14 高野山の井戸
  • 4-15 蝸牛の囃し詞
  • 4-16 壁の腰張り
  • 4-17 ムカデとマムシ
  • 4-18 足のしびれを直す方法
  • 4-19 熊野詣の手鞠唄異伝2
  • 4-20 人買い
  • 4-21 ホオズキ
  • 4-22 玄猪
  • 4-23 茶釜の蓋
  • 4-24 コオロギの鳴き声
  • 4-25 トンボ捕り
  • 4-26 そばまきとんぼ
  • 4-27 木偶茶屋
  • 4-28 七つ七里
  • 4-29 油虫

  • 4-15 蝸牛の囃子詞

     

    蝸牛
    かたつむり / wanko

     田辺で蝸牛を囃す詞は「でんでん蟲蟲、出にゃ尻つめろ」、近所の神子浜では「でんでん蟲蟲、角出せ槍出せ」。

    嬉遊笑覧巻十二上では「日次紀事云、蝸牛は人を見るとすぐに縮こまり(中略)、今また江戸の小児が「角出せ棒出せ、まいまいつぶり、裏に喧嘩がある」と言っているのはますます滑稽である」といっている。

    和歌山の岡山は砂丘で春夏、アリジゴクが多い。方言で「けんけんけそけそ」また「けんけんむし」。児童が砂を広げてこれを求めるのに「けんけんけそけそ、叔母處焼ける」と唱える。

    22年前、予はフロリダ州ジャクソンビルで、八百屋営業の支那人の店で、昼は店番、夜は昆虫下等植物を検鏡した。毎度店前の砂地へ、黒人の子供が集まり、アリジゴクを探る詞に「ヅロ・ヅロ・ハウス・オン・ゼ・ファイアー」やはり「アリジゴクの家、火事だ」と言って驚かすのだ。類縁のない遠隔の地で、同一の趣向が偶然合致して案出されたのだ。

    back next


    「紀州俗伝」は『南方随筆』(沖積舎) に所収。

    Copyright © Mikumano Net. All Rights Reserved.