4-15 蝸牛の囃子詞
田辺で蝸牛を囃す詞は「でんでん蟲蟲、出にゃ尻つめろ」、近所の神子浜では「でんでん蟲蟲、角出せ槍出せ」。
嬉遊笑覧巻十二上では「日次紀事云、蝸牛は人を見るとすぐに縮こまり(中略)、今また江戸の小児が「角出せ棒出せ、まいまいつぶり、裏に喧嘩がある」と言っているのはますます滑稽である」といっている。
和歌山の岡山は砂丘で春夏、アリジゴクが多い。方言で「けんけんけそけそ」また「けんけんむし」。児童が砂を広げてこれを求めるのに「けんけんけそけそ、叔母處焼ける」と唱える。
22年前、予はフロリダ州ジャクソンビルで、八百屋営業の支那人の店で、昼は店番、夜は昆虫下等植物を検鏡した。毎度店前の砂地へ、黒人の子供が集まり、アリジゴクを探る詞に「ヅロ・ヅロ・ハウス・オン・ゼ・ファイアー」やはり「アリジゴクの家、火事だ」と言って驚かすのだ。類縁のない遠隔の地で、同一の趣向が偶然合致して案出されたのだ。