4-6 宵の蜘蛛、朝の蜘蛛
Adult Male Jumping spider (Pelegrina pervaga) / Thomas Shahan
田辺の老人が伝える。宵の蜘蛛は親に似ていても殺せ、朝の蜘蛛は鬼に似ていても殺すな。これは夜の蜘蛛を不吉とするので、「吾が背子が来べき宵なり」と、蜘蛛を夜見て喜んだ古風と反対だ。
(中略)
しかしながら田辺の俗伝で、朝の蜘蛛を愛し、夜の蜘蛛を嫌うのは、蜘蛛は夜中跋扈活動し朝になって潜匿静居する者なので家内の治安上から割り出したのだろう。
広土行記には、蜘蛛が軍中およびに八家において集まると、喜ばしいことがある、とあり、これに反し、古欧州では、蜘蛛の網が軍旗や神像に着くことを不吉とした。
仏国では蜘蛛が走りまた糸繰るのを見ると金儲けすると言い、あるいは朝ならば金儲け、夕方なら吉報を得ると言う。しかし一説には、朝の蜘蛛は少しの立腹、日中のは少しの儲け、夕の蜘蛛は少しの有望を知らすのじゃと言う。
サルグが評して、蜘蛛が富の兆しならば、貧民がいちばん富まなければならないと嘲ったのは面白い。(1845年第5版、コラン・ド・ブランチー『妖怪事彙』39頁)