紀州俗伝(現代語訳4-11)

紀州俗伝(現代語訳)

  • 3-1 師走狐
  • 3-2 狐の仕返し
  • 3-3 ホタル来い
  • 3-4 雀と燕
  • 3-5 今生まれた子限り
  • 3-6 カイコの舎利
  • 3-7 月の8日
  • 3-8 欲深いシャレ
  • 3-9 2つの鐘
  • 3-10 比丘尼剥
  • 4-1 師走狐の鳴き声
  • 4-2 雨乞いの池
  • 4-3 フクロウと天気
  • 4-4 ホタル来い
  • 4-5 鰹鳥
  • 4-6 宵の蜘蛛、朝の蜘蛛
  • 4-7 他人の足の裏
  • 4-8 狐と硫黄
  • 4-9 早口言葉
  • 4-10 狼を山の神と
  • 4-11 女に化けるアナグマ
  • 4-12 葉巻煙草
  • 4-13 一文蛤
  • 4-14 高野山の井戸
  • 4-15 蝸牛の囃し詞
  • 4-16 壁の腰張り
  • 4-17 ムカデとマムシ
  • 4-18 足のしびれを直す方法
  • 4-19 熊野詣の手鞠唄異伝2
  • 4-20 人買い
  • 4-21 ホオズキ
  • 4-22 玄猪
  • 4-23 茶釜の蓋
  • 4-24 コオロギの鳴き声
  • 4-25 トンボ捕り
  • 4-26 そばまきとんぼ
  • 4-27 木偶茶屋
  • 4-28 七つ七里
  • 4-29 油虫

  • 4-11 女に化けるアナグマ

     

    アマグマ
    Badger 25-07-09 / Chris. P

     アナグマを西牟婁郡で「めだぬき」「つちかい(土掻きという意味)」また「のーぼ」という。安堵峰で予はその肉を味噌で煮て食うとはなはだ甘かったが、いっしょに煮る野菜が絶無で困った。

    この物は熊同様足に掌があり、人のように立つことができる。好んで女に化けるという。富里村の人(現存)が春の日、ワラビ採りに山へ行くと、かんざしを挿した若くすこぶる艶やかな女が立っていた。よって足を進めて近づいてみるとたちまち見えなくなった。立っていた所に穴があり、家に帰って犬を伴って来て、穴を捜してアナグマを捕らえた。

    また下秋津村生まれで予が知っている老人は、若いとき村の女と密会を約束した場所へ行って待っていると、この獣がその女に化けて来て、たちまち消え失せるなどして毎度困らされた、その辺りでは「せい」と呼ぶ、とのこと。

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    「紀州俗伝」は『南方随筆』(沖積舎) に所収。

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