7-5 誤りを正して
『郷土研究』へ寄せ書きする田本仁七氏の母の話に、
50年ほど前当郡三栖村のある家へ道者が来て宿り立ち去るに臨んで、宿の主婦に親切なもてなしに報いると言って、「大峰四所権現あびらうんけん薩婆訶(そわか)」と咒を教えてくれた。
主婦はこれを「大麦4升5合と油うんけん薩婆訶」と誤って覚えて行ったところ、諸病がことごとく治る。信徒が広めて3年ばかり大流行だった。
その後、道者がまた来て主婦が咒を誦するのを聞き、誤りを正した。誤りを正した通りに誦し始めてから一向に効果がなくなり、患者が来訪しないようになったと、語った人の名まで挙げたが、『閑田耕筆』にも「あびらうんけん薩婆訶」を油桶と誤り誦して効験があったが、誤りを正して後は一向に効かなかったとあったと記憶する。