紀州俗伝(現代語訳7-5)

紀州俗伝(現代語訳)

  • 7-1 目が潰れる
  • 7-2 膈の治療法
  • 7-3 カニの甲羅
  • 7-4 はえ,安倍晴明
  • 7-5 誤りを正して
  • 7-6 波風を鎮める
  • 7-7 怪我したときの呪い
  • 7-8 巨蜂に刺されて
  • 7-9 カマキリ
  • 7-10 フクロウが家の近くで
  • 7-11 はしか
  • 7-12 柚の擂り粉木
  • 7-13 リスは魔物
  • 7-14 塩鰹
  • 7-15 馬
  • 7-16 立里の荒神
  • 7-17 雨栗日柿
  • 8-1 子供をくすぐるとき
  • 8-2 野猪を威す方法
  • 8-3 柚の実と鍼
  • 8-4 葬式の行列
  • 8-5 まめのは
  • 8-6 花咲か爺の異態
  • 8-7 山の天狗様
  • 8-8 木地屋

  • 7-5 誤りを正して

     

     『郷土研究』へ寄せ書きする田本仁七氏の母の話に、

    50年ほど前当郡三栖村のある家へ道者が来て宿り立ち去るに臨んで、宿の主婦に親切なもてなしに報いると言って、「大峰四所権現あびらうんけん薩婆訶(そわか)」と咒を教えてくれた。

    主婦はこれを「大麦4升5合と油うんけん薩婆訶」と誤って覚えて行ったところ、諸病がことごとく治る。信徒が広めて3年ばかり大流行だった。

    その後、道者がまた来て主婦が咒を誦するのを聞き、誤りを正した。誤りを正した通りに誦し始めてから一向に効果がなくなり、患者が来訪しないようになったと、語った人の名まで挙げたが、『閑田耕筆』にも「あびらうんけん薩婆訶」を油桶と誤り誦して効験があったが、誤りを正して後は一向に効かなかったとあったと記憶する。

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    「紀州俗伝」は『南方随筆』(沖積舎) に所収。

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