紀州の民間療法記(原文1)

紀州の民間療法記(原文)

  • 1 婦女の陰
  • 2 ニラ
  • 3 ツゲ
  • 4 ハコネシダ
  • 5 シーボルトミミズ
  • 6 キジの爪
  • 7 ウサギの手、モグラの手
  • 8 初なすび、スベリヒユ
  • 9 コンニャク
  • 10 モグラの手 追記
  • 11 菖蒲
  • 12 キンカン
  • 13 琴の一の緒、白いアヒル、黒いチャボ
  • 14 サルカキイバラのキクイムシ、蜂蜜
  • 15 コバンザメの吸盤
  • 16 蒔かずの稲の米
  • 17 ニワトリの頭
  • 18 イチジクの枝葉
  • 19 テリハノイバラの花
  • 20 尾長糞蛆の黒焼き
  • 21 病をきる
  • 22 梅酢
  • 23 蘆
  • 1 婦女の陰

     

     田辺の老人に聞く。かつて童子指を火傷(やけど)せしに、その母ただちにその子の指を自分の陰戸に入れしめた。即効ありという。また斬髪屋の斬髪に婦女の陰毛三本混じ、煎じ飲めば、淋病いかに重きも治すとて、貰いに来る人ありと、 斬髪屋の話だ。

     『本草綱目』五二に、湯火傷灼に女人の精汁をもって頻々これを塗れと『千金方』より引いた。また「髪髲(髲は他人の髪を自分の髪を飾るに用いたのでカモジのこと)は小便水道を利す」。これを焼いて粉にし、石淋を治するため服する、とある。「また婦人の陰毛は、五淋および陰陽の易病を主(つかさど)る」とあり、「陰陽の易病」とは「病後に交接し、卵(たま)の腫れて、あるいは縮んで腹に入り、絞らるる痛みにて死なんとする」をいい、それを治すに「婦人の陰毛を取って灰に焼き、飲んで服す。なお、陰を洗える水をもってこれを飲む」とある。しからば、もと支那説で、本邦に伝わって俗人までも知り行なうたのだ。)

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    「紀州の民間療法記」は『南方熊楠全集 第2巻』(平凡社)に所収。

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