1 婦女の陰
田辺の老人に聞く。かつて童子指を火傷(やけど)せしに、その母ただちにその子の指を自分の陰戸に入れしめた。即効ありという。また斬髪屋の斬髪に婦女の陰毛三本混じ、煎じ飲めば、淋病いかに重きも治すとて、貰いに来る人ありと、 斬髪屋の話だ。
『本草綱目』五二に、湯火傷灼に女人の精汁をもって頻々これを塗れと『千金方』より引いた。また「髪髲(髲は他人の髪を自分の髪を飾るに用いたのでカモジのこと)は小便水道を利す」。これを焼いて粉にし、石淋を治するため服する、とある。「また婦人の陰毛は、五淋および陰陽の易病を主(つかさど)る」とあり、「陰陽の易病」とは「病後に交接し、卵(たま)の腫れて、あるいは縮んで腹に入り、絞らるる痛みにて死なんとする」をいい、それを治すに「婦人の陰毛を取って灰に焼き、飲んで服す。なお、陰を洗える水をもってこれを飲む」とある。しからば、もと支那説で、本邦に伝わって俗人までも知り行なうたのだ。)