本邦に於ける動物崇拝(現代語訳17)

本邦に於ける動物崇拝(現代語訳)

  • はじめに
  • 海豚
  • 鶺鴒
  • 野槌
  • 海亀

  • 鳶(トビ)

    鳶
    Kite / naitokz

     ○鳶、『和漢三才図会』巻四十四に、愛宕神が鳶を使者とするとあり、『十訓抄』に天狗が鳶の形で現われて子供に苦しめられた話がある。『今昔物語』に、源光公が五条道祖神祠の傍らの樹上に現われた仏を睨みつめたところ大鳶となって落ちたと載せ、『載恩記』に、魔法成就のとき鳶が来て鳴くとある。

    あまり評判がよろしくないようだが、金色の鵄(とび)がめでたい徴を表わして、長髄彦を伏誅した例もあるので、ずっと大昔は鳶も多少尊崇されたと見える。インドではラーマ王の美后シーターが悪鬼王ラーヴァナに奪い去られる途上、鳶が出てラーヴァナと闘う話がある(Raevenshaw, Journ. As. Soc. Bengal, vol. xi p. 1124; 1842)。フィリピンの島は鳶が水を蹴って作った所という古伝がある(F. Colin, 'Historia Filipinas,' Madrid, 1663, p. 64.)。

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    「紀州俗伝」は『南方随筆』(沖積舎) に所収。

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