本邦に於ける動物崇拝(現代語訳1)

本邦に於ける動物崇拝(現代語訳)

  • はじめに
  • 海豚
  • 鶺鴒
  • 野槌
  • 海亀

  • はじめに

    アゲハチョウの幼虫
    出会い頭 I want to advance straight! / "KIUKO"

     人類学雑誌288号216〜229頁に、中山笑君の「本邦に於ける動物崇拝」の一篇があり、読んですこぶる感興を催し、往年在英中にアストンディキンズ諸氏のために、このことについて集録した材料中より、次のように追加する。

     本邦上古、蛇狼虎などを神とし、はなはだしくは皇極天皇の御時、東国民が、大生部多(オオイクベノオオシ)に勧められて、橘樹などに生ずる常世の虫を神とし、祭って富と□を求めたことが、伴信友の『験の杉』に述べられている。

    しかしながら後世においては、直接動物を神として拝するのは稀で、多くは神仏法術などの縁で、多少の宗教的畏敬を加えられるのにすぎないことは、まことに山中氏が述べられたごとく、それすら、ただ今、旧を破り故を忘れるのに急いでいる状況に当たって、この辺りは僻地にあって、それが果たしてすでに過去の夢となり終わり、それが今も行われているかを判断するのは、望むことができないことなので、しばらく狭い見識のまま、現時もなお多少。そのかつて崇拝された痕跡を留めおいているらしいと思われるものをここに挙げよう。動物の名の上に○を記したのは、山中君の論文にすでに列記したもので、山何頁と書いたのは、同論文の何頁めにこの説があるという意味である。

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    「紀州俗伝」は『南方随筆』(沖積舎) に所収。

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