蛇に関する民俗と伝説(その4)

蛇に関する民俗と伝説インデックス

  • 名義
  • 産地
  • 身の大きさ
  • 蛇の特質
  • 蛇と方術
  • 蛇の魅力
  • 蛇と財宝
  • 異様なる蛇ども
  • 蛇の足
  • 蛇の変化
  • 蛇の効用
  • (付)邪視について
  • (付)邪視という語が早く用いられた一例

  • (名義3)

     英語でサーペントもスネイクも、蛇とは誰も知り居るが、時にサーペントおよびエンドスネイクと書いた文にう。その時は前者は人に害を加うる力ある蝮また蟒蛇等でその余平凡な蛇が後者だ。ヴァイパーとは上顎骨甚だ短く大毒牙を戴いたまま動かし得る蛇どもで、和漢の蝮もこれに属するからまず蝮と訳するほかなかろう。

    それからアスプといってエジプトの美女皇クレオパトラが敵に降らばその凱旋がいせん行列に引き歩かさるべきを恥じこの蛇に咬まれて自殺したとある。これはアフリカ諸方に多いハジ蛇なりという。これは既述竜の話中に図に出したインドのコブラ・デ・カペロ(帽蛇ぼうじゃ)によく似るが喉後の眼鏡様の紋なし。

    インドで帽蛇を神視しまた蛇つかいが種々戯弄してせるごとく古エジプトで神視され今も見世物に使わる物である。帽蛇は今も梵名ナーガで専ら通りおり、那伽ナーガは漢訳仏典の竜なる由は既述竜の話で繰り返し述べた。

    また仏教に※(「目+侯」、第3水準1-88-88)羅伽まほらかてふ一部の下等神ありて天、竜、夜叉、乾闥婆けんだつば、阿修羅、金翅鳥がるら緊那羅きんならの最後にならんで八部を成す。いずれも働きは人よりましだが人ほど前途成道の望みないだけが劣るという。この摩※(「目+侯」、第3水準1-88-88)羅伽は蟒神には大腹たいふくと訳し地竜にして腹行すと羅什らじゅうは言った。竜衆ナーガすなわち帽蛇は毎度頭を高く立て歩くに蟒神衆は長く身を引いて行くのでこれは※蛇ピゾン[#「虫+冉」、229-2]を神とするから出たのだ。

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    「蛇に関する民俗と伝説」は『十二支考〈上〉』 (岩波文庫)に所収

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