古事記伝
南方熊楠の随筆:本邦に於ける動物崇拝(現代語訳19)
予は一向不案内なことではあるが、『古事記伝』五に、『和名抄』で水神また蛟を和名美豆知と訓じている。豆(つ)は之(の)に通う言葉、知は尊称で、野槌などの例のごとしとあるので、「ミヅチ」は水の主、また蛇の主、野槌は野の主ということであろう。
南方熊楠の随筆:十二支考 蛇に関する民俗と伝説(その23)
『古事記伝』に拠れば、ノヅチは野の主の意らしい。予山中岸辺で蝮を打ち殺したつもりで苔など探し居ると、負傷した蝮が
南方熊楠の随筆:十二支考 猴に関する伝説(その27)
猴の話と縁が遠いが、『古事記』は世界に多からぬ古典で、その一句一語も明らめずに過すは日本人の面目を汚す理窟故、猿田彦に因んでヒラブ貝の何物たるを弁じ置く。さて猿田彦が指を介に挟まれ苦しむうち潮さし来り、溺れて底に沈みし時の名を底ドクすなわち底に
南方熊楠の随筆:十二支考 猴に関する伝説(その28)
本居宣長は
田毘古
に似たる故とせんは本末
はこの神の形に似たる故の名なるべしと説いた(『古事記伝』巻十五)。これは「いやしけど云々、竜の類いも神の片端と詠みながら、依然神徳高き大神をいかんぞ禽獣とすべけんや」と言った『俗説贅弁』同然の見を脱せず、
田毘古が
に似たのでなく
が
田毘古に似たのだとは、『唐書』に、張昌宗姿貌を以て武后に幸せられた時、