14-3 アナグマが女に化けること
アナグマが女に化けることは『郷土研究』1巻369頁ですでに述べたが(紀州俗伝 現代語訳4-11)、その後、西牟婁郡上秋津村の人に聞いたのは、アナグマはまことにうまく美装した処女に化けるが、畜生の哀しさで行儀をわきまえず、木にすばやく登ったり枝にブランコしたり、処女にあるまじきことばかりするから、化けの皮がすぐ現れると。
予が幼いとき雷獣というものを紀州でしばしば見せ物で見たが、ことごとくアナグマだった。馬琴の何かの小説に附けた雷獣考の中に猪状で爪が鋭い雷獣を書いてあったが、アナグマは支那では猪□(※犭+雚※)(ちょかん)と呼ぶほどに猪に似た者だから、これを雷獣とするのは少々拠り所がありそうだ。文部省の博物指教図に書いた雷獣一名キテンは貂(テン)の類らしい。