紀州俗伝(現代語訳15-2)

紀州俗伝(現代語訳)

  • 14-1 打出の小槌
  • 14-2 蟻の群れ
  • 14-3 アナグマが女に化けること
  • 14-4 猴神社
  • 14-5 馬を忌む稲荷神社
  • 14-6 紀州豊年米食わず
  • 14-7 猫が蟻を
  • 14-8 犬の脚
  • 14-9 盗人避けのまじない
  • 14-10 陰暦十月亥の月
  • 14-11 毒虫毒魚に刺された時
  • 15-1 紀州の七人塚
  • 15-2 血を吸わない蛭
  • 15-3 肉吸いという鬼

  • 15-2 血を吸わない蛭

     

     血を吸わない蛭 『郷土研究』1巻12号に、日高郡上山路村殿原の谷口という小字の田の中に晴明の社という小祠があり、この田に棲む蛭が、大きさも形も尋常の蛭に異ならないが、血を吸わず、医療のために捕えても益なし、と書いたが(紀州俗伝 現代語訳7-4)、そればかりではおもしろくない。

    昨年5月そこから知人が来たので、とくと尋ねると、晴明がここの蛭に血を吸われて、怒ってその口を捻った。それから一向に血を吸わなくなった。川ひとつ渡ったナガソウという小字には蛭がすこぶる多く、いたって血を吸う力が強いゆえ、医療用として多く捕られるという。

    また西牟婁郡旦来村の不動坂の辺りに地蔵庵がある。その地蔵を念ずれば安産で、また村人は祈願して蛭を調伏する。ゆえにこの辺りの蛭は人を刺さないと聞く。

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    「紀州俗伝」は『南方随筆』(沖積舎) に所収。

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