本邦に於ける動物崇拝(現代語訳21)

本邦に於ける動物崇拝(現代語訳)

  • はじめに
  • 蟾蜍
  • イワナ魚
  • 蜜蜂
  • 田螺

  • 蟾蜍(ヒキ)

    蟾蜍
    Southern Toad (Bufo terrestris) / abbydonkrafts

     蟾蜍はキリスト教国一般でこれを大毒があり、罪悪ある者として忌み嫌う(A. C. Lee, 'The Decameron, its Sources and Analogues.' 1909, p. 139)。予はかつて英国学士会員ブーランゼー氏にこのことを質したが、蟾蜍(ヒキ)の皮下に毒物があるのは事実であると語られ、昨年頃このことを学士会院で論ぜられた。ところが支那で多くこれを食い、本邦でも九州にそうする所があると聞く。山座円二郎氏の直話で「学生のとき貧しくてしばしばこれを烹食したが、随分かなりの味はある。しかし爪を取らずに食うとすこぶる苦かった」と。

    我が国では、欧州と変わってこの者を福と名づけ、人家に幸福をもたらす者とする。たしか『風俗文選』にも記してあったと思われる。和漢ともその霊物であることを言い(倭三巻五四)、Huc, 'L'Empire Chinois,' 1854. 支那でこれを祀っている廟があるのをいっていたと記憶する。『古事記』に、大国主神が少名毘古那神を見て、その誰かを知らず、蟾蜍の言葉を従って、久延毘古を召し問いてその名を知ったことがある。詳しくは『古事記伝』巻十二を見よ。

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    「紀州俗伝」は『南方随筆』(沖積舎) に所収。

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