1-1 和尚に化けるキツネ
西牟婁郡中芳養村境大字、30戸ばかりが固まって立つ。墓地が池の傍らにある。村の人が死ぬ毎に老狐が池の藻をかぶって袈裟とし、殊勝な和尚に化けて池のほとりを歩いた。毎年12月になると、「日がない、日がない」と鳴く。正月まで日数が少ないとの訳だ。
この2月まで予の宅にいた下女(18歳)の母は、幼いとき祖母の方に灯油を運ぶのに、この狐が出るかと恐ろしくて度々油をこぼし叱られたが、今はもう狐もいなくなった。
西牟婁郡中芳養村境大字、30戸ばかりが固まって立つ。墓地が池の傍らにある。村の人が死ぬ毎に老狐が池の藻をかぶって袈裟とし、殊勝な和尚に化けて池のほとりを歩いた。毎年12月になると、「日がない、日がない」と鳴く。正月まで日数が少ないとの訳だ。
この2月まで予の宅にいた下女(18歳)の母は、幼いとき祖母の方に灯油を運ぶのに、この狐が出るかと恐ろしくて度々油をこぼし叱られたが、今はもう狐もいなくなった。
「紀州俗伝」は『南方随筆』(沖積舎) に所収。
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