紀州俗伝(現代語訳1-1)

紀州俗伝(現代語訳)

  • 1-1 和尚に化けるキツネ
  • 1-2 除夜のお風呂
  • 1-3 吃りの真似
  • 1-4 熊野詣の手鞠唄
  • 1-5 熊野詣の手鞠唄異伝
  • 1-6 指が腐る
  • 2-1 小児の陰腫
  • 2-2 見た者カラス
  • 2-3 餅と塩
  • 2-4 栗の毒
  • 2-5 歯痛のまじない
  • 2-6 牧野兵庫頭
  • 2-7 耳の赤い猟犬
  • 2-8 閾の上を踏む罪
  • 2-9 卵の殻
  • 2-10 白花の紫雲英
  • 2-11 井戸に落ちた子
  • 2-12 大塔山
  • 2-13 鵁○の嫁入り
  • 2-14 ノミを取る人取らぬ人
  • 2-15 夜に爪を切る
  • 2-16 感冒
  • 2-17 盗人
  • 2-18 なた豆
  • 2-19 黒猫

  • 1-1 和尚に化けるキツネ

     西牟婁郡中芳養村境大字、30戸ばかりが固まって立つ。墓地が池の傍らにある。村の人が死ぬ毎に老狐が池の藻をかぶって袈裟とし、殊勝な和尚に化けて池のほとりを歩いた。毎年12月になると、「日がない、日がない」と鳴く。正月まで日数が少ないとの訳だ。

    この2月まで予の宅にいた下女(18歳)の母は、幼いとき祖母の方に灯油を運ぶのに、この狐が出るかと恐ろしくて度々油をこぼし叱られたが、今はもう狐もいなくなった。

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    「紀州俗伝」は『南方随筆』(沖積舎) に所収。

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