樟柳神とは何ぞ(口語訳6)

樟柳神:樟柳神とは何ぞ(口語訳1)

1 樟柳神
2 方術に植物の根を用いる例
3 マンドラゴラ、英名でマンドレイク
4 曼陀羅花
5 商陸
6 マンドラゴラの子を孕ます効果

6 マンドラゴラの子を孕ます効果

 

 

それからマンドレイクは古来子を孕ます効果があるとされた。『旧約全書』に以下のようにある。

ラケルは自分がヤコブに子を生まないのを知って、姉を妬たんでヤコブに言った、「私に子を与えよ。でなければ私は死のう」。ヤコブはラケルに向かい怒って言った、「あなたの腹に子を宿らせないのは神だ。私が神に代るれるものか」。

ラケルは言った、「私の仕女(つかいめ)ビルハを見よ。彼女の所にグッと入れ、彼女が子を産んで、私の膝に置こう。そうすれば私もまた彼女によって子を得るだろう」と。ラケルは仕女ビルハを彼に与えて妻とさせた。ヤコブは彼女の所に入った。ビルハはついに孕んでヤコブに子を産んだので、ラケルは言った、「神は私を鑑み、また私の声を聞き入れて、私に子を賜わった」と。そこでその子の名をダンと名づけた。ラケルの仕女ビルハは再び孕んで次の子をヤコブに産んだので、ラケルは「私は神の争いで姉と争って勝った」と言って、その子の名をナフタリと名づけた。

レアは自分が子を産むことのやんだのを見たとき、仕女ジルパを取って、これをヤコブに与えて妻とさせた。レアの仕女ジルパはヤコブに子を産んだので、レアは「やらかす門に福が来た」と言って、その子の名をガドと名づけた。レアの仕女ジルパは次の子をヤコブに産んだので、 レアは「私は幸せだ。娘たちは私を幸せな者となすだろう」と言って、その子の名をアセルと名づけた。

麦刈りの日にルベンは野に出て、恋茄(ズダイム、すなわちマンドラゴラ)を獲て、これを母レアのもとに持ってきた。ラケルはレアに言った、「あなたの子の恋茄を私にください」。 レアはラケルに言った、「あなたが私の夫を取ったのは小さな事でしょうか。それなのに、あなたはまた私の子の恋茄をも奪おうとするのですか」。ラケルは言った、「それではあなたの子の恋茄のために、夫を今夜をあなたと寝させましょう」。

晩になって、ヤコブが野から帰ってきたので、レアは彼を出迎えて言った、「私の子の恋茄をもってあなたを雇ったので、あなたは私の所に入らなければなりません」。ヤコブはその夜レアと寝た。神はレアの願いを聞かれたので、彼女は孕んで5番目の子をヤコブに産んだ。 レアは言った、「私が私の仕女を夫に与えたので、神が私にその値を賜わったのだ」と。その子の名をイッサカルと名づけた。

いつさかる(発情する)どころか、すぐさま矢継ぎ早にさかったのでレアはまた孕んで6番目の子をヤコブに産んだ。レアは言った、「神は私によい賜物を賜った。私は6人の子を夫に産んだので、夫は今から私とともに住むだろう」と。そのこの名をゼブルンと名づけた。その後、彼女は女子を産み、その名をデナと名づけた。

ここで神はラケルを心にとめられ、彼女の願いを聞いて、その胎を開かれたので、彼女は孕んで男子を生んで言った、「神は私の恥をすすいでくださった」と。そこでその子の名をヨセフと名づけて言った、「エホバがまた他の子を私にを加え賜られるように」と。

これに反して商陸には子を孕ませる薬功は一向にみえない。これらが二者のちがったところだが、ほかには似たことが多い(「創世記」30章124節)。

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「樟柳神とは何ぞ」は『南方熊楠全集 第4巻 雑誌論考 2』所収。

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