兵生(ひょうぜい)
現・和歌山県田辺市中辺路町兵生。
南方熊楠の手紙:粘菌の神秘について(現代語訳4)
小生は昨冬、安堵峰でモミラン(寒中に花が咲き実がなる。愛すべき青白花で、紅点がある)と称する希有の樹生蘭を採った。大学の牧野富太郎氏に送ったところ、非常に珍しい物だともっと多く求められる。小生は梅雨が済んだらまた兵生へこの菌を採りに行く。その節にいろいろ山男などのことを聞きただし、ひとつひとつひかえ申し上げましょう。
南方熊楠の手紙:山男について、神社合祀反対運動の開始、その他(現代語訳2)
またご存知の通り、猪、鹿、その他諸々の獣は冬期がことに美味でよく肥えていて、夏期に食えるものは深山の動物にはありません(『大和本草』に諸々の鳥のなかで鶯のみ夏食うことができるとあったように記憶しております)。現に前便で申し上げました兵生の松若と申す山男は、雪中に足跡を見たものがあると申し伝え、猪、鹿、諸獣を生け捕りして食う調味のため、小屋へ塩を乞いに来たと申し伝えます。
南方熊楠の随筆:紀州俗伝(現代語訳7-13)
西牟婁郡二川村大字兵生で聞いたのは、リスは魔物で1匹殺したら殺した辺りリスだらけに現われる。このように魔術を心得たものなので同地方で聞いた猿退治の話(郷研1巻170頁)でもリスを山伏としているのだと言う。
南方熊楠の随筆:紀州俗伝(現代語訳8-8)
西牟婁郡二川村大字兵生に木地屋の段という所がある。14、5年前に木地屋が4、5軒来てここを開いて住み、その去っていなくなった。阿波より出たという持種の民で、山を家とし山で生まれ山で果てる。言語は他と異なり、木地とはハイノキ、サカキ、ミズキなど割れやすい木で盆椀などを作る。また特に木地というのはこの図のような器に餅などを盛って神に供える物だ。
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