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Jackal through the grass / alistair.pott
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J. Theodre Bent の The Cyclades, 1885, P. 279. に「ギリシャのセマントラは妙な発音器である。寺ごとにたいてい木製と鉄製のこの物をそれぞれひとつ備えている。木製の物は平削りの木片、多くはモミジの木で作り、およそ長さ3フィート、幅2インチのものを堂の外に懸け、木槌で打ち鳴らす。通例、暁に木の物だけを叩く。しかしレントなどの式日は鉄製の物を打つ。これは半円形の の様でその音はひび目の入った銅鑼のようである。トルコ人がこの辺りを征服してキリスト教徒に鐘をつくことを禁じてからセマントラが行われるようになったと聞く」とある。前回引いたベロンが16世紀に目撃した物と記載が少々異なるが大体同じで、その少々異なるのは16世紀から19世紀の間に多少の改良を経たのであろう。
野干と狐とが別の獣であることは(同号49頁末より3行目)羅什訳『妙法蓮華経』二に、野干狐狼□(※「周+鳥」で1字※)鷲鴟梟と連ねていることから知ることができる。野干(ジャッカル)はその相貌は狼に近く、狡智は狐に類する。
大正3年孟買板行 Jackson and Enthoven, Gujarat Folk-Lore Notes, ch. X. 妖巫術(ウイッチクラフト)の1章はすべてダーカンのことのみを記す。前回引いたバルフォールの『印度事彙』その他諸書みな、ダキニを妖巫と訳しているのを照らし合わせると、ダーカンはダキニのグジャラチ名であることは疑いを入れない。その章の大略を抄しいう。
ダーカンに2種類ある。人類のと鬼類の者である。女子で特異の日に生まれる者は人類ダーカンである。その夫はこれがために死ぬ。またその邪視に中る一切の人も物もすべてが害を蒙る。
産死また不慮の死また自殺で果てた婦女もダーカンとなる。あるいは、下等性の女人が死んでダーカンとなる、上等性のダーカンは希な者である、と信じられているらしい。これらの鬼類ダーカンは美しい衣を着て体をおごそかに飾る。しかしながら背中を被わない。その背中を恐ろしく、見る者すべてが慄死する。鬼類ダーカンはただ婦女のみを苦しめ、これに憑かれた婦女は痙攣を急発し、髪を乱して訳もなく叫喚する。鬼類ダーカンは男を夫とし、美食を□し与えるのでその男は次第にやつれて、たいてい6ヶ月経たずに死ぬ。
また犢をして乳呑ず。□をして乳汁を生ぜず。あるいは乳の代わりに血を出させる。ダーカンの食は人の死体で、天に登ることができる。猫水牛山羊その他、何の獣の形にもなり、意に任せてその体を大きくしたり小さくしたりする。その足は反踵である。墓家廃池鉱穴、荒涼とした所に好んで居る。また四つ辻に当たる廃墟に出る、と。
この他諸章でもダーカンのことが若干条出ているが今は抄しない。
『桃源遺事』巻三に「水戸御城下に心光寺という寺がある。この寺は万千代殿(信吉)の御菩提所である。西山公はかの寺を久慈郡向山という所へ御引かせなされ、堂塔式の通りに仰せ付けられ法式なども御改正なされた。一方で鉦□は本式でないといって鰐口を差し置かれ、鉦鼓のように撞木で打ち鳴らし念仏を申すべしとのこと。これは空也上人の例であると云々」とある。例の上人が鰐口をふたつに分けて敲鉦としたという伝説に拠られたのであろうか。