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目出た目出たが三つ重なった日だった故、長者大いに喜んで、舎利弗らに飯を供し、おわって舎利弗呪願していわく、今日良時好報を得、財利楽事一切集まる。踊躍歓喜心悦楽し、信心踊発して十力を念ず、願わくば今日の後常に然らん事をと。長者これは大出来と喜んで、上妙の
摩訶羅寺へ帰って羨ましくってならず、舎利弗に何卒
その後僧どもまた長者に招かれ順番で摩訶羅が上座となった。その時長者の手代渡海して珍宝を失い、長者の妻告訴されその児も死亡した。凶事のみ
摩訶羅困って国王の胡麻畠に入って苗を踏み砕き畠番人に打ち懲らさる。何故我を打つかと問うに、この通り胡麻畠を踏み荒したからと言われて初めて気付き、道を教えもろうて前進し麦を刈って積んだ処へ来た。その国俗として
また道を示されて進み行くと葬式に出逢った。麦畑の主に教わったはここぞと念を入れて、多く入れ多く入れと唱えながら墓を遶った。喪主仰天して彼を捉え打っていわく、汝死人に遇わば
只今教わった通り葬式に対して言うべき事を述べると、また怒って頭を打ち破られ、狂い走って猟師が鴈網を張ったのに触れ鴈ことごとく飛んでしまう。猟師にまた打たれて詫び入ると
あり来った話を作り替えるにはなるべく痕跡を滅するのを上手とするから、大体について物羨みはせぬ事というだけが同一で大分違うて居るが、佐々木君の『江刺郡昔話』に載った灰蒔き爺の話に鴈を捉うる処あるのは、件の『雑宝蔵経』から花咲爺の話を拵え上げた痕跡と
桃太郎の話は主として支那で鬼が桃を怖るるという信念、それから「神代巻」の弉尊が桃実を投げて醜女を
タヒチ島のヒロは塩の神で、好んで硬い石に穴を掘る。かつて禁界を標示せる樹木を引き抜いて守衛二人を殺し、巨鬼に囚われた一素女を救い、また多くの犬と勇士を率いて一船に打ち乗り、虹の神の赤帯を求めて島々を尋ね、毎夜海底の妖怪鬼魅と闘う。ある時ヒロ窟中に眠れるに乗じ闇の神来って彼を滅ぼさんとす。一犬たちまち吠えて主人を
底本:「十二支考(下)」岩波文庫、岩波書店
1994(平成6)年1月17日第1刷発行
底本の親本:「南方熊楠全集 第一・二巻」乾元社
1951(昭和26)年
入力:小林繁雄
校正:門田裕志、仙酔ゑびす
2009年5月4日作成
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「彳+旁」 | 241-16 |