四村(よむら)
現・和歌山県田辺市本宮町。
南方熊楠の随筆:紀州俗伝(現代語訳6-1)
大師が己れに情が厚かった者に、相応以上の返礼をした例は、上述の弘法井の他に、東牟婁郡四村、大字大瀬近所に寺があり、その辺りに蒔かずの蕎麦といって名高いのがある。昔、大師がここの家に食を乞うと、何もなかったが亭主は憐れみ深くて畑に蒔こうと貯めて置いた蕎麦をある限り施したので、大師は例の石になれの咒もならず、亭主に向かい、この蕎麦の殻を蒔けと命ずる。その通りすると、殻から蕎麦が生え大いに殖え、以来毎年蒔かずに生い茂るとは有り難い。
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