ひだる神(口語訳2)

ひだる神(口語訳)

  • 1 餓鬼穴、ホコジマ
  • 2 腹が減っては
  • 3 餓鬼に付かれる

  • 2 腹が減っては

     

    【追記】

     予は那智の辺りにおったとき餓鬼に疲れるのを防ぐためといって、山行きごとに必ず握り飯と香の物を携え、その兆しがあれば少し食って無難を得た旨をすでに述べた。これに似たことが1923年ケンブリッジ版、エヴァンズの『英領北ボルネオおよびマレイ半島の宗教俚伝風俗研究』271と294頁に出ている。

    マレイおよサカイ人が信じるのは、食事、喫煙などを欲しながらそれを用いずに森に入ると、必ず災禍にあう。望むところの食事、喫煙を果たさずに行って、ヘビ、サソリ、ムカデに咬まれなければ、まことに僥倖というものだ。これをケムプナンと呼び、ひだるいながら行くという意味だ。このようなときは、自分の右の手の中指を口に入れて3、4度吸えば災難にあわない、とある。

    松浦白圭の『窓のすさみ追加』下に、柔術の名人が、近所に人を害して閉じ籠った者を捕らえよと、その妻が勧めても出ず、強いて勧めて後、ならば飯を炊け、食気なくては技をなしがたいといって、心静かに食事をして後押し入って、初太刀で強く首を切られながらその者を捕らえた、と記したように腹がたしかでないと注意が不足して種々の害にあうのである。

      熊野の説話:妖怪「ダル」

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    「ひだる神」は『南方熊楠コレクション〈第2巻〉南方民俗学』 (河出文庫) 所収。

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