1908年11月29日
◇11月29日[日] 快晴
午後、野田氏が藻類のホルマリン浸け標本を荷作りし、木箱1つに入れこむ。
予は田代まで歩く。それより帰って川べりで入湯し、東威樹氏が檜葉より来て入湯するのに会う。
夜、川べりで入湯し、千葉六之助という5才の肥大な児を見る。甚だおとなしい。横にもずおきがある。父は筏乗りである。先日、萩の中上にだまされ鴨緑江へ働きに行き、大に困窮し、家より旅費を送り、やっとのことで帰ってきたと。
この夜、予は遅くまで荷拵えし、野田氏は先に臥す。
メモ
もずおき?
山で伐採した木材は筏に組んで川を流して運んだ。紀州の筏師は卓越した技術を持ち、朝鮮の鴨緑江(おうりょくこう)まで出稼ぎに駆り出された。
1908年の日記は『南方熊楠日記 (3)』八坂書房 に所収