1908年12月1日:南方熊楠日記(現代語訳)

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1908年12月1日

◇12月1日[火] 晴

朝8時頃、武住の大黒屋を出立、大瀬にてナガエノアオツヅラフジを見る。茎はこのように巻いている(※蔓がZ巻きに巻きつく図あり、図は省略)。またハチジョウシダを取る。また平井川谷(ひらいごだに)にて前田富蔵(※川湯の宿・田辺屋の主人)が4〜5人連れて田辺から来るのに会う。帽菌2〜3、粘菌2〜3取る。倒れた老木の幹に付いていた Buxbaumia を少々と、前年那智にて得たような大 fylaria 蘚を若干取る。

小広峠に行き着いたのは2時過ぎであっただろう。弁当を食う。松屋に行き、荷持ちのことを頼む。荷物が今夕着いたときに荷持ちの市蔵に1円70銭(約束より20銭多い)渡すことを頼む。この家の前の木に植え付けたスギラン1株を10銭で買う。近露より旧道を経て大坂峠に着くと黄昏である。それより月明かりに乗じて十丈峠に行き着く。宿を断られたのを馬吉が事情を話し泊めてくれる。すぐに主人がほろ酔いで来て謝る。(馬吉とちょっと知人であるが酔って忘れたということだ。)それより臥す。

 草木図説5冊(1から5まで5冊)、近松世話浄瑠璃(歟)、高山植物図譜1冊、塩尻2冊 川島友吉氏へ貸している
 二千五百年史 同氏より借りている
 帝国文庫忠臣蔵義士伝 石友に貸している


メモ

この日熊楠が採取した Buxbaumia については「葉なき蘚について」という文章が書かれています。

この Buxbaumia は日本の蘚苔学の草分けである岡村周諦により新種として報告され、学名は Buxbaumia minakatae S.Okamura と名付けられました。蘚苔類で唯一、学名に南方の名が付いている蘚類です。

葉なき蘚について(現代語訳)

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1908年の日記は『南方熊楠日記 (3)』八坂書房 に所収

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