紀州俗伝(口語訳4-20)


紀州俗伝(口語訳)

  • 3-1 師走狐
  • 3-2 狐の仕返し
  • 3-3 ホタル来い
  • 3-4 雀と燕
  • 3-5 今生まれた子限り
  • 3-6 カイコの舎利
  • 3-7 月の8日
  • 3-8 欲深いシャレ
  • 3-9 2つの鐘
  • 3-10 比丘尼剥
  • 4-1 師走狐の鳴き声
  • 4-2 雨乞いの池
  • 4-3 フクロウと天気
  • 4-4 ホタル来い
  • 4-5 鰹鳥
  • 4-6 宵の蜘蛛、朝の蜘蛛
  • 4-7 他人の足の裏
  • 4-8 狐と硫黄
  • 4-9 早口言葉
  • 4-10 狼を山の神と
  • 4-11 女に化けるアナグマ
  • 4-12 葉巻煙草
  • 4-13 一文蛤
  • 4-14 高野山の井戸
  • 4-15 蝸牛の囃し詞
  • 4-16 壁の腰張り
  • 4-17 ムカデとマムシ
  • 4-18 足のしびれを直す方法
  • 4-19 熊野詣の手鞠唄異伝2
  • 4-20 人買い
  • 4-21 ホオズキ
  • 4-22 玄猪
  • 4-23 茶釜の蓋
  • 4-24 コオロギの鳴き声
  • 4-25 トンボ捕り
  • 4-26 そばまきとんぼ
  • 4-27 木偶茶屋
  • 4-28 七つ七里
  • 4-29 油虫

  • 4-20 人買い

     

     40年ほど前まで、和歌山市で川端などへ遊びに出る子供を、母が戒めるのに、日向の人買船に連れて行かれて炭を焼かせられると言った。そのころにそのようなことがあるはずがないが、ずっと昔に日向から遠国へ人買が出て、連れ去った人を炭焼きに苦使したときの戒めが遺ったらしい。

    謡曲「隠岐院」に「人買人、今日は東寺辺り、作道の辺りで人を買いたいものだと思います。中略、声を立てられたら叶わないと、髪を取って引き伏せて綿轡をむずとはめ、畜生道に落ちて行くかと、泣き声さえも出ないので云々」。

    帝国書院刊行塩尻54巻に「人を捕らえて、拘引して売った者、猿轡といって、物を言おうとすれば舌を切る物を含ませたとのこと。近世にも、出羽国南郷などでは、盗賊がいて人を欺き、猿轡を含ませたとか」。猿轡、綿轡は同じ物か。人買とは、人身売買の意味だが、じつは人を拘引する者を呼んだ名らしい。

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    「紀州俗伝」は『南方随筆』(沖積舎) に所収。




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