紀州俗伝(現代語訳2-6)

紀州俗伝(現代語訳)

  • 1-1 和尚に化けるキツネ
  • 1-2 除夜のお風呂
  • 1-3 吃りの真似
  • 1-4 熊野詣の手鞠唄
  • 1-5 熊野詣の手鞠唄異伝
  • 1-6 指が腐る
  • 2-1 小児の陰腫
  • 2-2 見た者カラス
  • 2-3 餅と塩
  • 2-4 栗の毒
  • 2-5 歯痛のまじない
  • 2-6 牧野兵庫頭
  • 2-7 耳の赤い猟犬
  • 2-8 閾の上を踏む罪
  • 2-9 卵の殻
  • 2-10 白花の紫雲英
  • 2-11 井戸に落ちた子
  • 2-12 大塔山
  • 2-13 鵁○の嫁入り
  • 2-14 ノミを取る人取らぬ人
  • 2-15 夜に爪を切る
  • 2-16 感冒
  • 2-17 盗人
  • 2-18 なた豆
  • 2-19 黒猫

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    2-6 牧野兵庫頭

     この法輪寺の墓地のオウチの木の下に、牧野兵庫頭の墓がある。銘字は摩滅してほとんど読むことができない。。頼宣卿のとき、この人は1万5千石を領す。かの卿の母方の三浦が米で1万石を受け、今川家以来の 家久能が伊勢の田丸城主として1万石を領したのに比べては、なかなかの大分限だった。

    帝国書院刊行「塩尻」巻43に、紀公に寵用され、男と成っても権勢があった者が、牧野兵庫頭が男色より出頭してその右に出るのが不快で、公に最期の盃を請い、高野に隠れた話を載せている。

    よって考えると、兵庫は男寵より出頭して、破格の大身分となったらしい。それなのに、大科に付き慶安4年新宮へ預けられ、承應元年4月田辺へ移され、11月10日に病死。月霜院殿円空寂心大居士と号す(田辺町役場古記録と、法輪寺精霊過去帳を参取する)。

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    「紀州俗伝」は『南方随筆』(沖積舎) に所収。

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