紀州俗伝(口語訳1-5)


紀州俗伝(口語訳)

  • 1-1 和尚に化けるキツネ
  • 1-2 除夜のお風呂
  • 1-3 吃りの真似
  • 1-4 熊野詣の手鞠唄
  • 1-5 熊野詣の手鞠唄異伝
  • 1-6 指が腐る
  • 2-1 小児の陰腫
  • 2-2 見た者カラス
  • 2-3 餅と塩
  • 2-4 栗の毒
  • 2-5 歯痛のまじない
  • 2-6 牧野兵庫頭
  • 2-7 耳の赤い猟犬
  • 2-8 閾の上を踏む罪
  • 2-9 卵の殻
  • 2-10 白花の紫雲英
  • 2-11 井戸に落ちた子
  • 2-12 大塔山
  • 2-13 鵁○の嫁入り
  • 2-14 ノミを取る人取らぬ人
  • 2-15 夜に爪を切る
  • 2-16 感冒
  • 2-17 盗人
  • 2-18 なた豆
  • 2-19 黒猫

  • 1-5 熊野詣の手鞠唄異伝

    ナマズ
    Big catfish / photojenni

     熊野詣の手鞠唄の異伝に、「燈心で括って田辺へ売りに往て、売れなんで、内に持って来て煮いて、 一切食や旨し、二切食や旨し、三切目に屁放って、田辺へ聞こえた」。また、「 西宮の和尚様が、火事やと思うて、太鼓叩いて走った」。

    放屁のことを付けたのは主として子供をおもしろがらせたのだ。アラビアンナイトは大人に聞かす物だが、回教徒がキリスト教徒を取って投げると、多くはキリスト教徒が放屁するとある。そこを演じる度に、聴衆は感極まって大呼動すると、バートンの目撃談だ。

    40年ばかり前まで、和歌山市の小児は夕時に門辺に集まって「岡の宮の巫女殿は、舞を舞うとて放屁て、鍋屋町へ聞こえて、鍋3つ破れて、鍋屋の爺様怒って、ヨー臭い臭いよ」と唄って舞ったものだ。岡の宮は聖武帝行宮の跡で、猿田彦を祀り、市中に今も社がある。鍋屋町は昔、鍋釜を作る者だけが住んだ町である。

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    「紀州俗伝」は『南方随筆』(沖積舎) に所収。




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