浄愛と不浄愛,粘菌の生態,幻像,その他(口語訳2)


浄愛と不浄愛,粘菌の生態,幻像,その他(口語訳)

  • 1 浄愛と不浄愛
  • 2 上婚下婚
  • 3 男色
  • 4 宦者
  • 5 妹尾官林で山ごもり
  • 6 川又官林へ
  • 7 二人の美少年
  • 8 美少年との別れ
  • 9 変態心理
  • 10 二人の美少年の妹ら
  • 11 粘菌と涅槃経
  • 12 相似
  • 13 美少年の妹ら
  • 14 美人王子
  • 15 粘菌学進講の前に
  • 16 わが思いの貴婦の一念
  • 17 浄の男道
  • 18 その世の人となる
  • 19 複姓
  • 20 粘菌学進講の後に
  • 21 幻像
  • 22 友愛

  • 上婚下婚

     貴書に見えた念者をタチ、若衆をウケというのは洋語の直訳で、近来できた言葉と察せられます。また御示しの上婚下婚のことは、大田錦城の『梧窓漫筆』に出ていることで、小生の創造ではありません。ただし男色にもこれがあるのは例がすこぶる多いことで、支那に船を渡す平凡な男が国王最寵の少年を云々したことがある。

      これは名高い話で(今の若い人は知らないかもしれない)、小生などはその全文を暗記している。すなわち(※以下漢文で私には訳せませんでした。申し訳ありませんm(_ _)m※)
    「嚢成君、初めて封ぜられる日、翠衣を着、玉剣を帯び、縞舃(こうせき)を履いて、遊水のほとりに立った。大夫、鍾(しょう)を鍾県に擢(ぬ)きて、執桴をして号令して呼ばわしむ、誰か能く王者を渡さん、と。ここにおいて、楚の大夫荘辛、過(まみ)えてこれを説(よろこ)び、ついに造(いた)り託して拝謁す。

      起立していわく、臣願わくは君の手を把(と)らん、それ可ならんか、と。嚢成君、忿(いか)って色を作(な)して言(ものい)わず。荘辛、遷延して手を盥(あら)い、称(の)べていわく、君独り聞かずや、夫(か)の鄂君子晳(がくくんしせき)が舟を新波の中に汎(うか)べしことを。青翰の舟に乗り、まんぴを極め翠蓋を張って、犀尾を検し桂 を班麗にす。鐘鼓の音畢(おわ)るに会うや、ぼうえいの越人、かじを擁(と)って歌う。歌の辞にいわく、濫として草にべんし、予がしょうげんを濫にし、予が昌州を沢す、州かん州焉乎、秦しょしょ、予を昭せんにまんす、秦、さんていをこえて河湖に う、と。

      鄂君子晳いわく、われ越の歌を知らず、子、試みにわがためにこれを楚説せしむ。いわく、今夕は何の夕ぞ、中洲の流れにとどまる、今日は何の日ぞ、王子と舟を同じうするを得たり、羞を蒙り好を被れども、こう恥をおもわず、心ほとんど頑にして絶えず、王子を得るを知らんや、山に木あり木に枝あり、心に君に説(よろこ)べども君は知らず、と。ここにおいて、鄂君子晳、すなわちしゅうべいをひき、行きてこれを擁し、繍被を挙げてこれを覆う。鄂君子晳は親しきこと楚王の母弟なり、官は令尹たり、爵は執珪たり。一の○枻の越人すら、なお交歓して意を尽すことを得たり。

      今君、何をもってか鄂君子晳にこえん、臣独り何をもってか○枻の人に若かざらん。君の手を把(と)ることを願うに、その不可なるは何ぞや、と。嚢成君、すなわち手をささげ、これを進めていわく、われ少(わか)き時またかつて色をもって長者に称せらる、いまがかつてりくに遇いてかくのごとく卒(あわ)てしことあらず、今より以後、願わくは壮少の礼をもって、謹んで命を受けん、と」〔劉向説苑』一一〕。

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    「浄愛と不浄愛,粘菌の生態,幻像,その他」は『南方熊楠コレクション〈第3巻〉浄のセクソロジー (河出文庫)に所収




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