シュレーゲル

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  • シュレーゲル(Schlegel, Gustav)

    グスタヴ・シュレーゲル(1840年〜1903年)は、オランダの東洋学者。ライデン大学中国語中国文学講座の初代教授。
    中国・日本関係の著作を多数発表。

    南方熊楠(1867~1941)との「落斯馬(ロスマ)論争」によって知られます。
    1897年、熊楠は東洋学の大家シュレーゲルのとある論文を読み、シュレーゲルに手紙を出します。
    「 シュレーゲル教授は『落斯馬』という動物をイッカクであるとしたが、これは誤りだ。『落斯馬』とはおそらくノルウェー語のLos(馬)・Mar(海)に由来する西洋起源の言葉でセイウチのことを指している」
    この指摘をシュレーゲルは受け入れず、熊楠を甘く見て軽くあしらおうとしますが、相手は熊楠。
    この論争は、熊楠がイエズス会宣教師フェルディナント・フェルビースト(欧州の天文学、地理学などを中国に紹介した。中国名は南懐仁)の著書に『落斯馬』の記載があり、しかもその記述が1世紀前の北欧の博物学者オラウス・マグヌスの記述とほとんど同じことを発見し、熊楠の完全勝利で決着がつきました。



    シュレーゲル

    南方熊楠の手紙:履歴書(現代語訳10)
    オランダ第一の支那学者グスタヴ・シュレーゲルと『正字通』の落斯馬という獣が何かを論じてから、見苦しい国民攻撃となり、ついに降参させて謝状をとり今も所持している(これは謝状を出さなければ双方の論文を公開してシュレーゲルの拙劣を公示すると言いやったのだ)。落斯馬(ロスマ)と申すのは Ros Mar(馬 海の)というノルウェー語の支那訳である。17世紀に支那にあった Verbiest(南仁懐という支那名をつけた天守僧である)の『坤輿図説』という書に初めて出た。これを、その文を慌てて読んで Nar Whal(死白の 鯨)(一角魚〔ウニコール〕)とシュレーゲルは言ったのだ。これから先ライデンから出す『人類学雑誌』(Archiv Fur Ethnologie)で、シュレーゲルが度々小生がロンドンで出す論文に蛇足の評を加えるのを小生は面白くなく思っていたので、右の落斯馬の答えの誤りを正してやったのだ。それなのに、わざと不服を唱えていろいろの難題を持ち出したのを小生は答えてやった。

    さて、いわく、汝シュレーゲルが毎度秘書のように名を隠して引用する(じつは日本ではありふれた書)『和漢三才図会』に、オランダ人は小便するとき片足を挙げて犬のようにするとある。むかしギリシアに、座敷がきれいでつばを吐く所がないといって主人の顔につばを吐いた者があった。主人がこれを咎めると、汝の驕傲を懲らしたのだと言った。そのとき、主人は汝みずからがその我よりも驕傲であることに気がつかないのかと言った。汝は日本人に向かって議論をふきかけながら、負けかかっているといって勝つ者を無礼呼ばわりする。じつは片足挙げて小便する犬同様の人間であって(欧米人は股引を履くため、片足を開かなければ小便できない、このところは犬に似ている)、自分で自分の無礼に気づかないものである、と。いわゆる人を憤死させるやり方で、ずいぶん残念ながらも謝状を出したことと思う。


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